私達の行く先は天ではなかった。
第伍話 ミーティア・ファウストの場合①
私はミーティア・ファウストです。ドイツ名ですがこれは本名ではなくて、我が愛しきお姉様、コメート・ファウストに付けて頂いた名前なのです。私達はれっきとした日本生まれです。と言っても、日本人ではなく"日本鶴"なのでございます。何を隠そう、私達は人に化ける術を得た日本鶴。でも、私達は日本古来の呪いや術には頼りません。私達は西洋の術、「魔法」によって姿を変えているのです。
お姉様と私は姿を変えず、十年おきに各地を転々としながら暮らしています。この羽が丘町も、もう七年目です。そろそろ住民が私達の老けなさに訝しげな視線を送ってくることでしょう。
そんな私達が普段どのように暮らしているかと言うと、詳細は後にするとしても、私は"鶴らしく"機織りをし、お姉様は占い業を営んでおられます。
お姉様の占いは占いらしからぬ断定する口調がぞわぞわすると町の皆様……や、一部の層で評判です。もっとも、当たる確率はそんなに高くはないそうですが。
しかし、話が楽しいとのことで、この町には時折遠方からもお客様がいらっしゃいます。そして今日も――。
ミーティア・ファウストの場合①
2023/02/16 up